山辺道万葉旅行

 

 石上神宮

石上、布留の神杉 神さびて 恋をも吾は さらにするかも   (11・2417)

をとめらが 袖布留山の 端道の 久しき時ゆ 思ひきわれは (4・501人麻呂)

石上 布留の高橋 高々に 妹が待つらむ 夜ぞ更けにける  (11・2997)

 

 衾道・引手の山(引手の山―竜王山か)

うつせみと 思ひし時に 取り持ちて わが二人見し 走出の 堤に立てる 槻の木の

ことごちの枝の 春の葉の 茂きが如く 思へりし 妹にはあれど たのめしり 児らにはあれど 
世の中を 背きし得ねば がぎろひの 燃ゆる荒野に 白妙の 
天領布(あまひれ)隠り
 鳥じもの 朝立ちいまして 入日なす 隠りにしかば 吾妹子が 形見に置ける みどり児の 
乞ひ泣くごとに 取り与ふる 物しなければ 男じもの 脇はさみ持ち 吾妹子と 
二人わが
宿()し 枕づく 嬬屋(つまや)の内に 昼はも うれさび暮し
夜はも 息づき明し 歎けども 
せむすべ知らに 恋ふれども 逢ふ
(よし)を無み 大鳥の
 
羽易(はがい)の山に わが恋ふる 妹はいますと 人の言へば 岩根さくみて 
なづみ来し 吉けくもそなき うつせみと 
思ひし妹が 玉かざる ほのかにだにも 見えぬ思へば

(2・210 人麻呂)

    短歌2首

去年(こぞ)見てし 秋の月夜は 照らせれど 相見し妹は いや年さかる (2・211)

衾道を 引手の山に 妹を置きて 山路をゆけば 生けりともなし (2・212)

 

 巻向・穴師

纏向の 痛足(あなし)の山に 雲居つつ 雨()れども ぬれつつぞ来し  (2・3126)

あしひきの 山河の瀬の ()るなべに 弓月が嶽に 雲立ち渡る  (7・1088)

ぬばたまの 夜さり来れば 巻向の 川音高し 嵐かも疾き    (7・1101)

巻向の 檜原(ひはら)もいまだ 雲ゐねば 子松が(うれ)ゆ 沫雪流る    (10・2314)

 

笠縫邑伝承地

檜原社

いにしへに ありけむ人も 吾が如か 三輪の檜原に かざし折りけむ(7 1118

往く川の 過ぎにし人の 手折らねば うらぶれ立てり 三輪の檜原は(7 1119

 

 三輪山

三輪山伝説 (古事記、崇神) 大物主―活玉依姫

      (崇神紀) 大物主―ヤマトトトヒモモソ姫

味酒(うまざけ) 三輪の山 あをによし 奈良の山の 山の際に い隠るまで 道の(くま) い積もまでに つぼらにも 見つつ行かむを しばしばも 見さけむ山を (こころ)なく 雲の 隠さふばしや

   反歌

三輪山を しまも隠すか 雲だにも 情あらなも 隠さふばしや (1・17・18額田王)

 

 

  三輪・巻向万葉旅行

 

磯城(しきしま)−兄磯城、弟磯城―磯城県主(志貴御県坐神社)

      磯城瑞垣宮(崇神帝)

      纏向珠城宮(垂仁帝)

      纏向日代宮(景行帝)

      訳語田幸玉宮(敏達帝)

      城島金刺宮(欽明帝)

 

海石榴(つば)(いち)

海石榴市の 八十のちまたに 立ち(なら)し 結びし紐を とかまく惜しも(122951

紫は 灰さするものぞ 海石榴市の 八十のちまたに 逢ひし児や誰 (123101

 

忍坂山(おさかやま・おっさかやま)

隠口(こもりく)の 長谷の山 青幡の 忍坂の山は 走出の 宜しき山の 出立の 妙しき山ぞ あたらしき 山の 荒れまく惜しも              (13・3331)

 

 初瀬川(三輪川)

初瀬川 白木綿花に 落ちたぎつ 瀬をさやけみと 見に来し吾を (7・1107)

泊瀬川 流るつ水脈の 瀬を早み 井堤(ゐで)越す浪の 音の清けく   (7・1108)

 

鏡女王墓

秋山の 樹の下隠り ゆく水の 吾こそ()さめ 御念(みおもい)よりは     (1・92)

 

 箸墓  倭迹々(やまととと)百襲(ももそ)(ひめ)(孝霊皇女)前方後円墳

(崇神紀)「是の墓へ(ひる)は人作り、夜は神作りき。(かれ)、大阪の山の石を運びて作るに、山より墓に至るまで、継ぎ登れる 石群を 手越に越さば 越しかてぬかも」

  

 泊瀬(1)

長谷(はつせ)の 斎槻(ゆつき)(もと)に 吾が隠せる妻 
茜さし 照れる月夜に 人見てむかも
     1云 人見つらむか(112353)

隠口(こもりく)の 泊瀬の山に 照る月は 満ち欠けしけり 人の常無き (7・1270)

 

泊瀬(2)

 籠もよ み籠もち 掘串(ふくし)もよ み掘串持ち この丘に 菜摘ます児 家聞かな 
名告らわね そらみつ やまとの国は おしなべて 吾こそ居れ 敷きなべて 
吾こそ
()せ 我こそは告れめ 家をも名をも                 (1・1 雄略天皇)

 

 隠口の 泊瀬の国に さ結婚(よばい)に 吾が来れば たなぐもり 雪はふり来 さ曇り 
雨ふり来 野つ鳥 
(きざし)はとよみ 家つ鳥 (かけ)も鳴く 
さ夜は明け この夜は明けぬ 入るりて旦眠む この戸開かせ                     (13・3310)

    反歌 

 隠口の 泊瀬少国(をぐに)に 妻しあれば 石は()めども (なを)ぞ来にける (13・3311)

 

   泊瀬(3)

 河風の 寒き長谷を 歎きつつ 君が歩くに 似る人も逢へや  (8・425)

 泊瀬風 かく吹く参更(よひ)は 何時までか 衣片敷き 吾がひとり宿()む(10・2261)

 

   小椋の山

 夕されば 小倉の山に 鳴く鹿は 今夜(こよひ)は鳴くかず 寝宿(いね)にけらしも (8・1511 舒明天皇)

 

 冬こもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど 
山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては
 
黄葉(もみぢ)をば 取りてぞ賞ぶ 青きをば 置きてぞ嘆く
 そこし恨めし 秋山吾は

(1・16 額田王)

 山辺道   

 巻向・車谷・・・檜原・・・大神神社・・・志貴御県坐神社・・・金屋・・・初瀬川・・・忍坂

 海石榴市・・・大神神社・・・狭井神社・・・茅原・・・巻向・・・穴師・・・山辺道上陵(景行)
・・・山辺道匂岡陵(崇神)・・・柳本・・・大倭神社・・・丹波市・・・石上・・・高橋
・・・大宅(奈良白毫寺か)・・・奈良