万葉旅行―大和路・周辺―

大阪大学 万葉旅行の会

 

飛鳥 飛鳥(飛鳥藤原京 大和三山)

橿原

 玉襷(たまたすき) 畝火の山の 橿原の 日知(ひじり)の御代 ()れましし 神のことごと (つが)の木の
 いやつぎつぎに 天の下 知らしめししを・・・        (1・29 人麻呂)

畝傍山

 香具山は 畝火雄男(うねびをを)()() 耳梨と 相争ひき 神代より 斯くなるし 
古も 然なれこそ 
現身(うつせみ)も (つま)を 争ふらしき

    反歌

 香具山と 耳梨山と ひし時 立ち見に来し 印南(いなみ)国原 (1・13,14中大兄)

飛鳥川 

明日香川 しらがみ渡し ()かませば 流るる水も のどにかあらまし (2・197 明日香皇女挽歌 人麻呂)

年月も いまだ経なく 明日香川 瀬瀬(せぜ)渡しし 石走(いしばし)もなし  (7・1126)

 

明日香川 七瀬の淀に 住む鳥も 心あれこそ 波立てざらめ   (7・1366)

 

明日香川 瀬瀬の玉藻の うち(なび)き (こころ)は妹に 依りにけるかも (13・3267)

 

耳成山

無耳(みみなし)の 池し恨めし 吾妹子が 来つつ(かづ) 水は涸れなむ  (16・3788)

 

香具山

ひさかたの 天の香具山 このゆうべ 霞たなびく 春立つらしも(10・1812)(人麻呂歌集)

草枕 旅の宿りに 誰が(つま)か 国忘れたる 家待たまくに   (3・426人麻呂)

 

八釣川

八釣河 水底絶えず 行く水の 続ぎてぞ恋ふる この年来を  (12・2860)(人麻呂歌集)

八釣山 

八釣山 木立も見えず 落り 雪はだらなる 朝楽しも  (3・262)

磐余 

百伝う 磐余の池に 鳴く鴨を 今日のみ見て 雲隠りなむ (3・426)(大津皇子)

飛鳥 

采女(うねめ)の 袖吹き返す 明日香風 都を遠 いたづらに吹く  (1・51志貴皇子)

 

神岳(かみおか)に登り 山部宿袮赤人の作れる歌1首並びに短歌

三諸(みもろ)の 神名備山(かむなび)に 五百枝(いほえ)さし (しじ)に生ひたる (つが)の木の いやつぎつぎに
 
玉葛(たまかづら) 絶ゆる
ことなく 在りつつも 止まず通はむ 
明日香の 
(ふる)京師(みやこ)は 山高み 河とほしろし 春の日は 山し見が慾し 
秋の夜は 河し
(さや)けし 朝雲に (たづ)は乱れ 夕霧に (かわづ)はさわぐ
 見るごとに 
()のみし泣かゆ
 いにしへ思へば

  反歌

明日香川 川淀さらす 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなく (3・324,325)

 

真神の原

大口の 真神の原に (ふる)雪は (いた)くな降り 家もあらなく (8・1636 舎人郎子)

 

天飛ぶや 軽の路は 吾妹子が 里にあれば ねもころに 見まく欲しけど 止まず行か 人目を多
 数多く行か 人知りぬべみ 
狭根葛(さねかづら) 後も逢はむと 
大船の 思ひ(たの)
みて 玉かざる 磐垣淵の (こも)のみ 恋ひつつあるに
渡る日の 暮れ去るが如 照る月の 雲隠る如 奥藻の 
(なび)きし妹は
 
黄葉(もみぢは)の 過ぎて去にき
と 玉梓の 使の言へ 
梓弓 声に聞きて言はむ
(すべ) ()すべ知らに
声のみを 聞きてあり 得ねば 吾が恋ふる 千重の一重も 慰む 情もありやと 吾妹子が
 止まず出で見し 軽の市に 吾が立ち聞けば 
玉襷(たまだすき) 畝火の山に 喧く鳥の
 声も聞こえず 
玉桙(たまほこ)の 道行く人も 一人だに 似て行かねば 
すべをなみ 妹が名喚びて 袖振りつる
 (2・207 人麻呂)

 

軽の池の 浦行きめぐる 鴨すら 玉藻のうへに 独り寝なくに (3・390 紀 皇女)